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相原酒造 広島県 呉市

浮沈の末に辿り着いた酒造り その技術・アイデアを 惜しみなく提供

取材日 2014年02月
「上品・きれいな食中酒」を理想とし、造り続けている相原酒造。 過去の様々な鑑評会でも優秀な成績を収めてきたが、 昨年は市販酒で競い合うイベントの純米酒部門においても、 同蔵の「雨後の月 特別純米」が見事一位に輝いた。 このように出品酒から市販酒まで高い評価の酒を生み出せるのは、 杜氏や蔵人の技術や感性はもちろんのこと、 作業中のちょっとした工夫から莫大な設備投資まで、 常にベストな方法を探し、選択してきたからこそ。 その裏には相原社長の酒造りに対する 探究心と柔軟な姿勢があった。

ノウハウはオープンに
みんなで良い酒を造りたい

 『研究熱心なアイデアマン』。そんなキャッチフレーズが相原社長には似合う。蔵のあちこちに溢れたアイデア、工夫、オリジナリティ。とにかく「なるほど」と膝を打つようなものがたくさんあるのだ。

 例えば、母屋と蔵の間の屋外スペースに設置されたバッチ式の瓶燗機。温泉にでも浸かるように、打栓後の瓶が行儀良く並んでいる。コの字型のものとは違い、温度を上げた後に水を投入して急冷するタイプのものだ。

 「バッチ式にしたのは理由があって、上と下の温度差を1度以内にできるんですよ。このノウハウを使った瓶燗機はうちのオリジナルだけど、これと同じものを取り入れている蔵もありますよ」。

 そう言って、蔵元の名をいくつか挙げた。しかし、そんなノウハウを他の蔵に教えてしまってもいいのだろうか?すると、こちらの考えを見抜いたように、相原社長は言った。

 「うちのことは全部オープンにしてくれて構わないから。みんなで良い酒造ったほうがいいでしょ」。

 そういえば、広島県には「魂志会」という6軒の蔵元で結成した会があったことを思い出す。相原社長もそのメンバーの一人。聞けば、この瓶燗ノウハウだけでなく、枝桶での仕込み、洗米方法など、自蔵で成果の出ている技術は惜しまずメンバーに提供しているという。「魂志会」は「」の村上氏が勉強会を呼びかけたことから結成されたが、相原社長は最年長ということもあって、若手蔵元にとっては頼りになる存在。「広島県の蔵のレベルを引き上げたい」、さらには「日本酒業界を盛り上げたい」という思いから、メンバーはもちろん、他県の親しい蔵元にもオープンにしている。

▲上と下の温度差を1度以内にできる。

▲山形県の酒蔵にて使用していたものを参考に作った洗米用シャワー。

アイデア満載!
造りでのさまざまな工夫

 洗米は気泡で洗うウッドソン社のバッチ式洗米機を使用。特徴は2台並列で使用していることであり、このスタイルで洗米を行ったのは相原酒造が最初だという。さらに、ここでひと工夫するのが相原流。洗って出てくる米をステンレスのカゴで受ける際、中にネットを敷くことを思いついて製品化した。浸漬後カゴからネットごと米を引き上げ、水を切り、米が割れないよう、そのまま半切り桶に運んで積み重ねておく。これならカゴを大量に用意する必要がない。今ではウッドソン社がこのネットを洗米機と併せて提供しているが、実はこの発案者は相原社長であった。

 吸引脱水機も業務用の吸水機と計量器を組み合わせたオリジナル。浸漬後の米を計量器に乗せると、設定した重量まで水が切れた時に吸水がストップする仕組みだ。また、蒸米は昔の釜の原理を再現し、最後に108度の乾燥蒸気で蒸し上げる。

 上槽以降の温度管理を徹底していることも同蔵ならでは。薮田式の圧搾機を冷蔵室に設置し、搾る時の室温を0度に保っている。そして、上槽した翌日に滓を引き、サーマルタンクにてマイナス5度で貯蔵。火入れに関して、瓶燗は前述の通りだが、それ以外はプレート式の熱交換機を使用。熱交換機自体は珍しいものではないが、プレートを通して湯と熱交換し、一旦65度まで上げた酒を12度まで急冷できるという。同蔵の生酒はマイナス5度で貯蔵しているので、この酒と熱交換することによって、ここまでの急冷を実現した。そして、火入れ後も冷蔵室にて2度以下で管理する。

 このようにさまざまな工夫が見られるが、決してすべてがオリジナルというわけではない。他蔵のアイデアを良いと思えば、「どうやってるの?うちでも真似させて」と取り入れる。研究熱心で気さくな人柄の相原社長らしい。また、気になる設備・機器があれば、既に導入している蔵元へ意見を求めることもある。

▲床用製麹機の中は木ではなくアルミ。

▲上槽は0度の冷蔵室で行う。次の上槽まで粕も取らない。

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